コンビニ経営のトラブル事例
労務問題
このようなお悩みをお持ちではありませんか。
- お金や商品を窃盗した従業員への対応に困っている
- コンビニ業界特有の労務問題に詳しい弁護士に依頼したい
- 無断欠勤を続ける従業員を解雇したい
コンビニ経営と労務問題は切っても切れない関係です。
24時間営業などで生じてくる様々な問題の中で、コンビニ経営も一般企業同様に、多くの人の集まりである以上、様々な価値観をもった人が所属し、所属する人の間でも様々な関係性が構築されることになります。その結果として、ある日突然、上記のような労務問題に直面することになります。
このような問題を放置することは、問題解決のために多額の費用を要し経営者がトラブル対応に貴重な時間を割かれるという短期的な問題と、従業員全体のモチベーション低下や職場環境の悪化による業績低下という長期的な問題を引き起しかねません。
そこで、以下では企業が直面することの多い労務問題をピックアップしながら、どのように対処すべき、どうすれば問題を回避することができるかについて、コンビニ特有の労務問題について解説いたします。
各トピックをご覧いただくことで、現在コンビニオーナーの皆様が抱えている問題をどのような方向性で解決すべきか、あるいは将来どのような紛争が起こる可能性があるかなどをシミュレーションすることが可能です。
もっとも、労務問題は、個別具体的な事情を勘案するという傾向が強い分野ですので、トピックをご覧になられたのみで、解決できないという事例も多々あろうかと存じます。
そのような際には、是非一度当事務所までご連絡ください。詳しいご事情を伺いながら適切なアドバイスをご提供させていただきます。
1. 無断欠勤を行った従業員への対応
従業員の中には、オーナー様のご親族や、そのような関係に無くても長いことよく働いてくれる信頼のおける従業員がいると思います。
一方で、店舗の金品に手を付けるなどといった違法行為とまではいかなくても(このような従業員に対する対応はこちら)、無責任な行為を行ってオーナー様に迷惑をかけるような従業員もいると思われます。
今回は、そのような従業員の迷惑行為の中でも、無断欠勤についてその時期や程度の応じた対応の概要をご説明します。
まず、採用初日からそのまま一切出勤して来なかった場合です。
このような非常識な者がいるのかと思われるかもしれませんが、最近では決して稀なケースではありません。
このような場合、契約解除をするか、そもそも労働契約そのものが成立していなかったと解釈できる場合もあります。この場合は、オーナー様と従業員との間に雇用契約がない以上、特に何か手続が必要となることはありません(ただし、このように解釈できるためには、従業員として採用しようとした者に就労の意思がなかったことを後々明らかにできるよう若干の対応は必要となります)。
そうでない場合は、急遽人員の補充等を行うなどしなければならないことから、オーナー様としてはすぐにでも解雇したいところではあると思われますが、少なくとも14日程度は解雇することはできません(昭和23.11.11基発第1673号、昭和31.3.1基発第111号参照)。
また、解雇をする場合であっても、放置していれば済む訳ではなく、出勤を促す連絡等適切な手順を踏む必要があります。この場合にどのような手続きが必要なのかは、貴社の就業規則によって変わりますし、また、就業規則を上手に定めることで、無用な混乱や手間を最小限に抑えることができます。
この場合は、①の初日から出勤しないケースと異なり、不十分ながらも労働の実績がある以上、労働契約が成立していないというロジックで片づける訳にはいかず、適切な解雇のための手続を踏む必要があります。
そして、この場合も、①同様、出勤を促す連絡等適切な手順を踏んだりするなど、就業規則にのっとって処理を進めていくことになります。そして、やはり①同様、就業規則を上手に定めることで、無用な混乱や手間を最小限に抑えることができ、その意味で、専門家による適切な就業規則の作成が必須といえます。
このような従業員への対応については、既に経験済みのオーナー様もいらっしゃるかもしれません。
この場合も、①と異なり、不十分ながらも労働の実績がある以上、労働契約が成立していないというロジックで片づける訳にはいかず、適切な解雇のための手続を踏む必要があります。そして、この場合は、①や②のように全く出勤しなくなった場合よりも、不十分ながら就労の意思は継続している以上、何度も連絡を取る必要があるなど解雇のハードルは高くならざるを得ません。
状況にもよりますが、まずは退職勧奨をするなどの、解雇を回避する手段を検討する必要があります。仮に解雇する場合でも顧問弁護士に相談の上、慎重におこなうべきです。後の法的紛争を避けるためにも、解雇は出来る限り最後の手段とするべきです。
実際に解雇できたとしても、派生して以下のような問題も発生します。
まず、給料ですが、仮に無断欠勤によってオーナー様が実害を被ったとしても、実際に働いた分については満額支払わざるを得ません。無断欠勤の罰金などといって勝手に天引きするような行為は、気持ちは分かりますが許されません。中には、給与を支払うと言っても振込先を指定しなかったり受け取りに来ない従業員もいるかもしれませんが、それでも払わなくてよいものではなく、最悪、供託をするなど何らかの対応を採る必要はあります。
オーナー様からすれば、無断欠勤によって売り上げに影響が出たり、シフトの組み直し、採用コストの増加なども生じるので、その分の損害賠償を請求したいと考えるかもしれません。しかし、現実的には、無断欠勤と損害の因果関係の立証は困難であるなどの理由から、オーナー様に損害を与えるために意図的に無断欠勤を行いそれにより重大な損害を与えたような極めて限定的なケースでなければ請求は難しいと思われます。
また、コンビニエンスストアの場合は制服を貸与していると思われますが、このようないいかげんな従業員は、その返却を行わないことも考えられます。この場合も、口頭、電話、メール、内容証明と段階を踏んで強い意思表示をしていくしかありません。会社からの連絡で解決しない場合には弁護士に交渉や法的手続きを依頼する必要が生じます。
以上、無断欠勤を行った従業員への対応についての概要となります。お読みいただいてお分かりになったように、この問題に限らず、対従業員の問題は、まずは就業規則をどのように定めているかが大きなポイントとなります。
そもそも、就業規則にて懲戒処分の規定がない場合には懲戒解雇をすることはできません。よって、就業規則がない場合やあっても懲戒処分の規定がない場合には、早急に規定を整備する必要があります。加えて、就業規則に無断欠勤の場合の対応についての規定がなければ、解雇に至るまでにはかなりの労力がかかりますが、この点を明確に規定しておけば、その手間は大きく軽減されます。
また、実際に適切な就業規則を定めたとしても、解雇には従業員との交渉を重ねる必要があり、時間的制約の多いオーナー様にとっては頭の痛い問題になります。
当事務所は、コンビニエンスストア内の就業規則の整備はじめ、問題のある従業員への対応などの豊富な経験と実績があります。このような事件が起きる前に、就業規則の見直しなどにつき、ぜひご相談ください。
2. レジのお金や店舗の商品を無断で持ち出した従業員への対応
従業員との関係でオーナー様を悩ませる問題の一つに、従業員によるレジのお金や店舗の商品の無断持ち出しがあります。店舗の財産が狙われる犯罪としては、外部の者による窃盗や強盗の被害に遭うケースがまず考えられますが、これについては、防犯設備の設置や有事の際の従業員教育の徹底を行う他はなく、いざ事件が発生した際には警察の手に委ねることになります。
これに対し、従業員がレジのお金や店舗の商品を無断で持ち出した場合には、
- その従業員の行為を犯罪行為として捜査機関に申告するかという問題(刑事)
- その従業員の行為によって生じた損害をどのように金銭的に補填させるかという問題(民事)
- その従業員の雇用関係をどのように扱うかという問題(労働)
の大きく分けて3つの対処すべき問題があります。
実際に従業員によってそのような行為が行われた場合、オーナー様としてまず考えるべきは、「その従業員をどのように扱いたいか」という点です。
一番重いのが、①被害を警察等に申告してその従業員に刑事処分を受けさせ、②被った損害を民事的に金銭で補填させた上で、さらに③雇用関係を終了させるといったことになるでしょう。
しかし、従業員とオーナー様との間の人間関係やこれまでの勤務態度、実際に当該従業員を解雇した場合への業務への影響等の諸事情によっては、これらの全てもしくは一部を行わないということも考えられます。
そこで、まずはオーナー様において、当該従業員をどのように扱いたいのか、言い換えれば、上記①~③のメニューのうちどれを選択し、どれを選択しないか(②を実行しない場合に①や③を行うという条件付きのメニューも考えられます)をお決めいただく必要があります。
以下、それぞれどのような対応が必要か、概要をご説明します。
当然ながら、従業員がレジのお金や店舗の商品を無断で持ち出した場合は、他人の財物を無断で自分の物とした訳ですから、何らかの犯罪行為に該当する可能性があります。
一般的には、レジのお金に手をつけたら業務上横領罪(刑法253条)、商品を無断で持ち出したら窃盗罪(刑法235条)となるような感覚かもしれませんが、実はそのように単純ではありません。
その従業員の置かれていた立場や業務内容によって、同じような行為であっても業務上横領罪に当たったり、窃盗に当たったりすることになります。
次に、実際にオーナー様が行うべき行動としては、まずは証拠の保存です。防犯カメラが典型的ですが、レジであればログが残っているでしょうし、商品の入荷や販売を示す帳簿等も証拠となるかもしれません。
それらが消えてしまわぬよう保存を行う必要があります。特に注意すべきは防犯カメラの画像であり、ものによっては1週間程度で上書きがされて犯行時の様子が消えてしまうので注意が必要です。できれば保存期間を長くなるように設定をする必要があります。
そのような作業と並行して、関係者からの事情の聞き取りや、警察への連絡等を行い、最終的に被害届や告訴状を提出することになります。これらは速やかに行う必要がありますので、一時的に雑務に忙殺されることにはなります。
金銭的な解決を図るためには、まずは損害額を正確に把握することが必要です。これは、レジのログや帳簿から計算することになります。
そして、その金額に、場合によっては、事件によって生じたその他の付帯的な損害(店を閉めて調査を行ったことによる売上減等)加算して請求をすることになります(ここで難しいのは、付帯的な損害があまりに理不尽であると暴利行為として無効となる可能性があるので、経験のある専門家による妥当な額の見極めが重要です)。
損害額が確定したら、これをどのように請求するかの問題となります。一括で支払ってくれれば問題ありませんが、従業員は金銭的に困っているからこそこのような犯罪を行ったのであって、通常一括払いは期待できません。
そこで、分割払いの合意をし、それを文書で残すということになるのが一般的であると思われますが、それについても、普通の書面で残すのか公正証書にするのか、どのような文言を入れるかについては、一つ間違えると何の意味もない書面になりかねないので注意が必要です。
また、必要に応じて、家族、親族の方に保証人となってもらうことも検討するべきです。
書面を交わした後に従業員(その頃には元従業員かもしれませんが)が順調に支払ってくれれば問題はありませんが、支払いが滞った場合には、支払督促や訴訟、強制執行、保証人への請求を行ったりする必要が生じます。この時に、先ほどご説明した合意書の書きぶり等が足を引っ張る可能性があるので注意が必要です。
従業員を懲戒解雇する場合は、まずは就業規則を確認する必要があります。一般的な就業規則であれば懲戒解雇の事由に該当すると思われます。
しかし、懲戒解雇の事由に該当するからといって、「お前はクビだから明日から来なくて良いよ。」だけですむものではなく、当該従業員に弁解する機会を与えたり、解雇通知書を作成して渡すなど、必要な手続や作成すべき書面があります。
「犯罪を行ったあいつが悪いのだから適当に負い出せば良いだろう」と考えてこのような手続を怠ると、いざその従業員が労働基準監督署に行って不当解雇であるなどの主張をされたり労働審判や訴訟等で争われると、対応に多大な労力と費用を要します。
仮に最終的にオーナー様の主張が認められたとしても、それまでに長い年月と費用を費やすことになりかねません。
そのような事にならないためにも、当該従業員を解雇するという方向性を決めた時点で、将来を見据え、問題が起こる前に適切な対応を採る必要があります。
以上、レジのお金や店舗の商品を無断で持ち出した従業員への対応についての概要です。
この件に限りませんが、いずれも、初動の対応によっては後々かえって大きな問題を引き起こしかねません。
当事務所は、多くのコンビニエンスストアのオーナー様との顧問契約実績があり、この種の事案に対する豊富な経験があります。このような事件が起きた際、速やかにご相談ください。